IT記者会講演再録

IT記者会Reportに掲載したインタビューと講演再録です

大和田昭邦氏【下】

 

パソコンでCOBOL

――現在はどういう仕事が中心なんですか?

大和田 今は四国電力が最大のお得意さん。電力の制御系システムを一括で受託している。それとか自動車メーカーに直契約で人を出している。というのは昔ね、私は東芝にいて制御系のハードウェアを開発していた。だからアプリケーション・プログラムは分からない。だけどOSの構造とかBIOSとかはコードレベルで分かる。それでパソコンでメインフレーム用のCOBOLプログラムを作れるようにした。  

――それは何時ごろの話?

大和田 20年以上前になりますね。DOSのパソコンでACOS(エイコス:NEC製のメインフレーム。米GE社のアーキテクチャを継承・発展させた国産メインフレームの代表的ブランドの一つ)用のCOBOLプログラムを作って、300bps(ビット/秒)の回線で送るようなことをやっていた。電話がかかってこないことを祈りながら、40分もかけてね。  

――シグマプロジェクトみたいなことを実際にやってたんだ。

大和田 あれは構想で終わっちゃった。こっちは実際にやってた。インストールしたら一発で動いたんで、発注者が驚いて電話をかけてきたことがある。それがきっかけで構造化プログラミングとかプログラム・モジュールとか、ソフト工学的な本を書いて。そんなこんなで四国電力の仕事をもらえるようになった。ちっぽけなソフト会社だけど元請けの仕事をやってる。  

――それなら外注を使えば売上高はもっと増えるじゃないですか。世の中のソフト会社は、多かれ少なけれ、そうやっている。

大和田 外注を使ったら、もっと会社を大きくできるよ、って言ってくれる人もいましたよ。ある程度の規模がないと、大きな仕事を請けられないのも分かる。でも会社が大きければいい、っていうもんでもない。やっぱり技術ですよ。地元のソフト会社はレベルが低い。東京、大阪の会社でも似たり寄ったりでね、レベルが低い会社と一緒に仕事をすると、あとがたいへん。このレベルでよくお金がもらえるな、って思うことがしばしばある。当社が請けているのはハードと一体化したシステムですからね。だから基本的に、自社の技術者をガンガン教育して……。 パートナーと役割分担  

――どこのソフト会社でも社員教育に力を入れてる、って言ってます。でも実態はどうなんだか、よく分からない。 大和田 私の父親が教育者だったの。私は埼玉の生まれで、成り行きで今は高松で仕事をしている。教育しなきゃ人は育たない。それとできる範囲の仕事しかしない。つまり県内の外注は一切使わない。使うとしたら、当社(うち)より高い技術、スキルを持っている会社に仕事を出す。そのときはスルーですよ。

――スルーっていうのは、管理費とか仲介料を取らないっていうこと?

大和田 ピンハネはしない。だって当社よりレベルが高いか、当社ができない仕事をやってもらうんだもの。一緒に仕事をしてもらう会社からピンハネはできないよね。

――分業なんだ。

大和田 当社(うち)の技術者だけでできる仕事ばかりじゃない。パートナーと分業して役割分担で仕事をする。そうじゃないとベタベタのグズグズになって、派遣の連鎖になる。それはそれでビジネスとして否定しないけど、面白くないじゃない。  

――踏ん張ってますねぇ。

大和田 地方都市でやっていくには、踏ん張るしかない。当社も偉そうなこと言ってるけど、つい3年ほど前、ある商社と組んでパッケージをやろうとして失敗した。あっという間に経営がおかしくなってね、そういう苦い経験がある。だからもう一度原点に戻ってね、教育をガンガンやって、私は私で農業とか漁業に視野を広げている。  

――領域を広げる作戦ですか。

大和田 そんなところだけど、ソフトウェアとか情報システムっていうのは、何のためにあるのか、だよね。それを考えると、人間にとって不可欠のものに目を向けざるを得ない。次にお会いするときはその話をしましょう。