IT記者会講演再録

IT記者会Reportに掲載したインタビューと講演再録です

及川秀悟氏 受託でクラウド型システム(3)

ビジネスチャンスは24時間・365日

及川 化粧品の通販会社はね、受注すると管理系システムが更新されて、それが宅配便会社や倉庫会社にダイレクトに配送指示を出すシステムになってます。
――全自動。
及川 その会社は、注文が増えると伝票を書く要員を増やさなければならなかった。ところが当社のシステムを使うと、要員を増やす必要がないわけです。しかも化粧品というのは、夜に注文する人が多いらしいんです。若い女性が会社から帰って、ほっと一息ついてからネットを開く。そういう行動パターンがあるんでしょう。リアルな店舗ですと、そういうお客さんをつかむことができない。
――経営者や事業部門の長はいつでも、どこでも受注状況を把握できる。
及川 ネットビジネスというのは24時間、365日動くこと、国境を越えるということが大前提です。真夜中でもWebで注文は受付けるけど、処理は翌日のバッチ、あっと思ったら在庫がないというのでは、即日発送が当り前になるこれからはとても対応できない。
――それをひっくり返すと、時差を利用したビジネスも可能になる。
及川 ネット旅行会社がそうですよね。Webで海外旅行の申込みを受付ける。その情報をリアルタイムで海外の拠点に伝える。日本は真夜中でも、海外は昼間ですから、ホテルの手配ができる。翌日の朝、申し込んだ人に「ホテルの予約が完了しました」というメッセージを送ることができる。当社もアメリカのカンサス州に事業所があって、そこからネットを監視しています。


As−Is分析よりTo-Be

――先ほどのお話で、業務分析から御社が受託したということでした。As−Is分析ですか?
及川 As−IsよりTo−Beですよね。As−Isをいくら分析しても、問題点が分かるだけで、そこで停まってしまうことがあるんです。ぴこねっとが行う業務分析はTo−BeのモデルからAs−Isの課題を解決するアプローチ。
――To−Beの押し売りになりませんか?
及川 お客さんはそもそも当社のインターネット・マーケティング・システムに着目して相談にくるわけです。現在のシステムでは対応できないという認識がある。だから経営者や企画部門の方は、漠然とかもしれませんけど、To−Beを持っているんですよ。当社のパッケージ型サービスで解決するか、どこまでカスタマイズするか、それとも特注で作りこむか。そこを探っていけばいい。
――となると、経営者の話を聞くことがものすごくたいせつになる。
及川 わたしはミロク経理の時代からそれしかやってこなかったんです。フェイス・トゥー・フェイスでお客さんの話を聞いて、考えを引出して、それならここにコンピュータを入れましょう、そのためには組織や手続きをこう変えましょう、って提案してきたんですね。
――コンサルティング
及川 それだけじゃお金をいただくことはできない。だからITで解決して、お客さんのビジネスが広がって行って、初めて当社が対価を得る。当社だけ儲かればいいというビジネスは成立しません。
――お客さんの売上げや利益に応じて対価を得るというモデルにはなりませんか?
及川 工場の生産ラインのように、何人の削減効果があったか、生産効率がどのくらい上がったかというなら、削減できた給与とか生産性をもとに、システムの使用料を受け取ることができるかもしれません。でもTo−Beモデルですからね。景気が悪くなって売上げが下がる、利益が出なくなる。そうしたらお客さんに当社がお金を払う。理屈の上ではそういう変なことになってしまう。
――さすがにそれは無理かもしれませんね。ただ、成功報酬のプラスアルファがあってもいいでしょ?
及川 そうかもしれません。でも、そこそこにやっていければいいんですよ。年間売上高は1億5,000万円ぐらいですけど、契約社員を入れてもたった11人でしょ? いまさら人月単価の仕事はできないし。でも受託型ソフト業のように外注費がありませんから。データセンター会社に払うサーバー運用費ぐらいかな? 売上高はある程度安定しているので計画的な投資ができる。大きな案件を取ろうとも思ってません。かえって負担になってしまうから。
――クラウドでは大儲けはできない、ということですかね。落語の「三方一両損」じゃなくて、三方一両得のモデル。
及川 結局はWin−Winですね。
――長時間、ありがとうございました。