IT記者会講演再録

IT記者会Reportに掲載したインタビューと講演再録です

大和田昭邦氏(ダイナックス高松代表取締役)【上】 

地方都市で元請として踏ん張る 自社より高技術の会社に外注

――大和田さんとお会いするのは、実は今日が初めてなんですけど、私が取り組んだ過疎地の町起こしプロジェクトに、激励のメールを送っていただいたたことがある。その後、Swimy(メールベースの会員制コミュニティ)でお名前を見るようになりました。それで初対面という気が全くしないんですね。

大和田 そんなこともありましたね。もう7、8年前になるかな。私もね、ピロリ菌を使った有機農法とか真珠の養殖とか、四国の農業や漁業を応援しているんで、他人事とは思えなかった。  

――今回はそっちの話じゃなくて、高松市というか香川県というか、そのソフトウェア業がどういう状況にあるか、なんですが。さっきセミナーのパネリストの方々と打ち合わせしてたとき、「これから大和田さんと会うんですよ」と話したら、皆さん、大和田さんのことご存知だった。地元でも有名人なんだ。

 いたいことを言っている

大和田 偏屈だからじゃないの? 地元で大手というと、ユーザー系かメーカー系。独立系で、しかも派遣をやってないのは少ないから。けっこう言いたいこと言ってます。

――地元のソフト業は、東京とか大阪とかから仕事を持ってきているんですか?

大和田 どうなんだろう、ご他聞に漏れず多くは都市圏の下請け仕事が半分、残りが地元の仕事という感じじゃないかな。県内でコンスタントに開発案件が出るのは自治体ぐらいですから。メーカー系のソフト会社だって地元の仕事じゃなくて、東京や大阪の仕事をしてるんでしょう。  

――仕事を持ってくるんですか? それとも派遣している?

大和田 それぞれ東京や大阪に支社を作っているから、派遣にはならない。地元の仕事を東京や大阪に出してもいるみたいですよ。でも中には、地元で採用だけして、都市圏の大手の情報サービス会社に人を派遣している会社もある。大学は会社の実態を調べないから、売上高規模とか社名で学生を送り出すんだよね。それは極端なケースだけど、多くは下請けの技術者派遣で成り立っている。  

――多重取引きの中で、御社は何次請けの段階にあるんですか? 大和田 今は1次請けか2次請けが中心。3次請けの仕事もないわけじゃないけど。  ――受注価格はどれくらい? もしよければ教えてください。

大和田 技術者のスキルにもよるし、仕事の内容にもよるけれど、月額でいうと80万円の上下。派遣ベースだと40万円台なんていうのもあります。  

――40万円台じゃ、とてもやっていけないでしょう?

大和田 現場での教育を兼ねてるから、それは割り切っている。基本は社内でじっくり教育するんだけど、やっぱり現場じゃないと分からないこともあるから。  

――最初から元請けの立場だったんですか。だとしたらそれはそれで興味がある。

発注担当者がITを知らない

大和田 そんなわけ、あるはずないじゃないですか。会社を始めた当初はもちろん下請けでした。ただ普通だと派遣でスタートするんだけど、当社には人がいなかったから、自分一人でやるしかなかった。それでコンピュータ・メーカーから仕事をもらったりしているうち、やっと地元企業のシステム開発をするようになった。  

――コンピュータ・メーカーから仕事をもらっていたほうが楽じゃないですか。

大和田 楽なもんか。そりゃ経営者は楽だろうけど、現場はたまったもんじゃない。もう古い話だから現在に通じるとは思わないけど、メーカーから出てくる仕事っていうのは、値段が安くて、そのくせ難しいんですよ。メーカーは自分たちではできないか、やったら損をすることが分かっている仕事を外注に出してくる。そうじゃなかったら、メーカーは自分でやるに決まってる。外注を使ったほうが儲かるから外注を使う。つまり仕事しか出してこない。納期は厳しいし、もし下手なものを納めたら、相手が「いい」っていうまでやらなきゃならかくなる。下請けは生かさず殺さず、ということだよね。その点、日本IBMっていう会社は違った。大学時代の友だちが日本IBMにいてね、仕事をもらったことがる。あの会社は外注のソフト会社を育てようとしたよね。ただメーカーからもらう仕事って、お客さんが見えないじゃない。  

――それで地元指向ですか?

大和田 まぁそうだけど、地元企業の仕事っていっても、システム担当者がITを知らなくて、困ったことがある。  

――地元企業のほうが地縁とか人間関係があるから交渉しやすいと思ってました。

大和田 確かにそれは地域の利点ですね。みんな地元で何かのとき顔を合わせるから、ひどいことはできない。仕事を取るときには地縁とか人間関係があって、いいんだけれど、ところがね、中に入る会社の担当者がシステム開発を分かってくれていないとかえって難しい。  

――具体的にどんなことですか?

大和田 もう昔のことだから話しても構わないだろうけど、1990年代のバブル崩壊後にね、ある造船会社が「これからはITだ」っていうんで情報子会社で外注を使い始めた。ところが、そこに来るのは造船の現場をリストラされたプライドだけ強い人なんだ。ソフト技術者っていっても、外注の作業員と同じような認識だから、月20万円とか。どんなに説明しても分かってくれない。紹介してくれた人との関係があるから、逆ザヤでも請けざるを得なくて大損したことがある。そういうデメリットもある。それでメーカーの仕事もダメ、2次請けもダメ。

 

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