IT記者会講演再録

IT記者会Reportに掲載したインタビューと講演再録です

宇陀栄次氏(2)

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時間も戦略的な経営資源

私が申し上げたいのは、投入予算の大小だけではありません。いかに早く、的確にシステムを動かすか。これが現在のIT利活用に求められているということです。大きな予算を投入して長い時間をかけてシステムを作っているうちに、市場のニーズは変わってしまう。「時間」も戦略的な経営資源なんですね。

エコポイントも定額給付金も、「なるべく早く稼動させたい」けれど、「利用は期間限定」という2つの条件が付いています。期間限定なので、大きな予算を投入できない。  しかし対象となるデータ量が膨大なうえ、情報を提供すればいいというわけではない。受け取ったデータを業務プロセスに沿って処理しなければならない。どうしたってアプリケーションシステムが要る。

そういうシステム化のニーズが、事業所ごとのイベントとか期間限定のキャンペーンとか、どの企業にも多かれ少なかれ、必ずあると思います。これまでは予算と時間の制約で、そういうニーズを本社の情報システムに取り込んで具体化するのは「無理」とされてきました。しかし今はそうではなくなった。

証券業界や業績分析の用語で「ROI」というのがあります。釈迦に説法でしょうけれど、「Returne pn Investment」のことで、「投資回収率」とか「投資収益率」と訳されます。当社がご提案したいのは、「ITのROI」ですが、ここで特に重要なのが時間です。投入した時間は取り返せません。

情報システムの価値については様ざまな議論がありますが、私の考えでは、サービス・インの時点が経営でいう「損益分岐点」に当ります。開発期間はお金が出て行くだけ、稼動して初めて事業に貢献するわけですから。そうすると、開発期間は短ければ短いほどいい。ですが、これまで大規模な基幹系システムは開発に平均18か月かかっていますから、どうしたってROIは低くなる。

もし開発期間を6か月に短縮できたら、損益分岐点がこれまでより丸1年前倒しになって、システムの価値が上がる。3か月なら、もっと価値が高くなるし、その価値は企業の競争力を強化することになるでしょう。1か月なら、1週間なら、と突き詰めていく。これが当社が描くクラウドのメリットです。

個別のアプリケーションで見ると、SaaSとどう違うんだ、ということになりますし、エコポイントのシステムと甲府市の定額給付金システムは見かけが全く違います。でも、実は同じセールスフォースの仕掛けで動いているんです。環境省や経産省、甲府市は、システムを早く稼動させるという成果を手にすることで、ITのROIを高めることができた。もうすでにクラウドのメリットを享受している、といっていいのかもしれません。

 

自分の庭に機関車を走らせますか?

最近、「プライベート・クラウド」という言葉を耳にするようになりました。既存のWebアプリケーションをポータルに集約してワンストップ化するということなのか、ヤフーや楽天のようなコンシューマー向けWebサービスの機能を自社のシステムに取り込むという意味なのか、ちょっとよく分かりません。

先日、ある大手の都市銀行の頭取をなさっている方とお話ししましたら、面白いことを仰ってました。

ーークラウドっていうのは、逆から読めばいいんだよ。

と仰るんですね。

クラウドの逆読みですから「ドウラク」(笑)。

逆から読むのがいいか悪いかは別として、プライベート・クラウドっていうのは自分の庭にレールを敷いて機関車を走らせるというわけです。遊園地なら分かりますが、当社の立場からすると、こっちの方がドウラクじゃないかなんて思います(笑)。

たしかに大きな空港とか工場なんかだと、専用のシャトルバスが走っていたり地下鉄やモノレールがあったりしますから、そういうのもアリかな? という気がしないでもありません。

ただ、それを全部自分で作って自分で運用するかというと、どうなんでしょう。やっぱり専門のITベンダーが提供するクラウドの基盤を利用した方が、コスト、セキュリティ、メンテナンスなんかを考えると、総合的にはメリットがあるんじゃないでしょうか。

それともし自社で専用のクラウドを構築すると、外部のITリソースを使えないというデメリットが出てきます。例えば当社のシステムには17か国語に対応した多国語翻訳機能があって、グローバル企業にはたいへん好評なんです。イメージは無理ですが、テキストであれば、見積書とか提案書、議事録などを簡単に翻訳することができる。

この機能は実は当社が開発したものではありません。グーグルの機能を使っているんですね。ですから地図を貼り付けたりもできる。もちろん無償で提供されている多のアプリケーションも取り込める。インターネットの世界とは、そういうものなんで、その特徴を活用しないのはどうなんでしょうか。