IT記者会講演再録

IT記者会Reportに掲載したインタビューと講演再録です

【アーカイブス】IT取引環境を巡る現状と動向の把握〜大手企業の取り組みを探る〜(2009年6月)②

外注費比率10%増で営業利益3%減

 図2のグラフ、元になっているのはIT記者会独自の「情報産業業績調査」のデータです。アンケートの回答と決算発表資料、有価証券報告書などからシステム開発を主業務とする情報サービス会社のピックアップしています。

図2 外注費比率と営業利益率の関係

 横軸が売上高に対する外注費の割合、縦軸が営業利益率です。スペースの関係で、個々の企業名は削除しました。各社の外注費比率と営業利益率のクロスするところをポインティングして、傾向を分析したものです。

 2006年度通期、98社の平均は外注費比率33.2%、営業利益率5.7%でした。2007年度の上半期は61社、外注費比率は32.7%、営業利益率は3.8%となっています。

■2重3重の要員派遣の温床

 横軸が右のほう、つまり外注費の比率が高くなると営業利益率が増えていきますが。外注費比率35%を超えると営業利益率はが落ちていきます。回答数が少ないので、なんでこうなるのかは、いくつか理由が考えられますが「これだ!」というものは特定できていません。

 斜線の角度がだいたい30度ですから、外注費比率が10%上がると営業利益率は3%落ちる計算です。営業利益率を上げたければ、外注費比率を30%以下に下げなさいということです。

 これによって何が起こるかというと、売上高の水ぶくれです。外注費比率が30%とすると、真水の100が2倍、3倍に増えて行きます。管理コストが増えますし、コミュニケーションが阻害され、責任の所在が曖昧になってしまいます。大規模なシステム開発になると、ここに2重、3重の要員派遣が重なるので、もう何がなんだか分からなくなります。

 ユーザーが発注した100万円が途中で半分になって行くということは、ある意味で業界を広く潤しているのかもしれませんが、有無を言わせず取引上の優位な立場を利用したピンハネや値切り、支払いの遅延も起こります。さらにユーザーから見たら詐欺にあっているようなものですから、ある意味でこの業界が社会的な不正行為を働いている。

■ピンハネとリスクヘッジ

 管理費、事務費という名目で中抜きするだけのブローカーもいて、実際は魑魅魍魎ということもあるようです。グラフでいうと外注費比率が60%以上で営業利益率が1%というような会社ですね。口利き料、紹介料を取っている。

 実際、ヒアリングで韓国のソフト会社を巻き込んだ18次請けという信じられない話もありました。5次請け以下になると横つながりで話を取り次いだだけかもしれません。この話をしてくれたユーザーが気がついて仕切り直しして、あるエンジニアリング会社に発注してコトなきを得たそうです。

 ピンハネといいますか管理費の比率も調べました。元請けで有無を言わさず20から30%前後、2次請け段階で15から20%、3次請け段階で10から15%だそうです。原発注者(ユーザー企業)が人月100万円で発注しても、2次請けが受け取るのは70万円、3次請けでは60万円、4次請では50万円台になってしまいます。元請けにとって多重取引きは、リスクヘッジと利益をもたらすオイシイ仕掛けということができます。 

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